久遠寺勇里(28)
槇原真希(28)
葛西丈二(26)
大阪三郎(58)
安里雅(43)
議員
首相官邸
・議員「以上が、我が国内で開始されている私企業・民間による軍事力になりうる案件のすべてです。首相」
・安里「ご苦労さまです。次の業務については追って連絡します。ありがとう」議員「失礼します」(退出)
・N安里「我々地球防衛軍が保有する一万のエクストランサー部隊......あらゆる地形・戦況に適合する装備を携えたとしても、反抗組織は後を絶たない。我が軍のエクストランサーが鹵獲されたケースは別として、私企業や民間人による反抗組織への技術提供は疑わざるをえないのが実情......機動兵器開発の先頭に立つ我が国からの技術流出だけは食い止めなくてはならない」
・安里「ふう......ん?」(書類の束を眺めてため息。そしてアヴェルブレイバーに気づく)
・安里「勇者計画......アヴェルブレイバー......?」
・N勇里「時は、西暦2216年。これを聞いている21世紀の君らにとって、この物語は近未来の出来事だと思う。だからこそ言っておきたい。百年やそこらじゃ、人間は大して進歩してない。まして、男の理想なんてぇモンは、未来永劫変わらないんじゃないかぁ?と、俺は思ってしまった。いやそう確信する!」
工場・建造が進むアヴェルブレイバー
・勇里「おーーーーいお疲れーーー!」(デッキの上から)
・丈二「あああああああああ!勇里てめえええええええええ!」(下階からタラップを上る)
・勇里「おお!?」
・丈二「オイコラ!てめえこの1ヶ月雲隠れしやがって、どういう了見だ!えっ!?勇者計画の総責任者様よ!?」
・勇里「お、怒るなって......ちゃんと仕事してたよ」
・丈二「ワケを説明しろ!ワケを!」
・真希「そうよ。アンタがいないおかげで、役所の職員だの調査員だのが押しかけてきて、開発とは関係ない面倒事まで私達がやらされてるんだからね」
・勇里「悪かった悪かった。それより、これ見てくれよ」
・丈二「あ?」
・真希「え?」(パソコンを付けて画面を見せる)
・丈二「人材募集?インターネットで?」
・真希「メカニック・ソフトウェア開発・エンジニア全般。経理経営・マネージメント。弁護士......」
・丈二「お前、人手増やすのか?給料払えねえだろ」
・真希「そうよ。私達のツテで集めてきた有志の人たちでなんとか回らないことはないわ」
・勇里「へっへー。実はねえ、クラウドファンディングのプロジェクトを見て、完成を楽しみにしてるユーザーからまた寄付が集まったのだ」
・丈二「あそこからさらにか!?」
・勇里「ま、もちろん湯水のように湧いて出てくるもんでもないから、しっかり人は選んでるけどね。この一ヶ月はその人材集めで世界中飛び回ってたってわけ」
・丈二「お前、仕事はどうしたよ。軍の仕事は」
・勇里「やめた」
・真希「はぁ!?」
・勇里「やめたよ軍は。そもそも人型機動兵器エクストランサーのパイロットになりたいだけで軍に入ったようなもんだからね。アヴェルブレイバーなんて夢の塊が手に入っちゃうなら、エクストランサーにまた乗りたいとは思わないだろうから」
・真希「け、計画が終わってからはどうするのよ?」
・勇里「ま、そん時ゃそん時でまた仕事でも探すよ。だいじょーぶだいじょーぶ」
・真希「あんたねえ、その自信はどこから」
・丈二「槇原、こいつにそんなこと言っても無駄だぜ」
・真希「え?」
・丈二「やりたい事にまっすぐになってるこいつはね、テコでも動かないの」
・真希「............」(ちょっと勇里を見なおしている?)
・勇里「んでな、んでな。今日早速ごっついメカニックマンが来る予定なんだぜ♪」
・真希「どんな人なの?」
・勇里「えーっと名前はたしか」
・三郎「大阪三郎だ」(ばばん!)
・勇里「おーーー!大阪さん!2週間ぶり!面接の時はどーもどーもぉ」
・丈二「え?大阪......三郎......?」
・真希「知ってるの?」
・丈二「ま、まさか......まさか、あの機動工房で主任設計者をしていた、大阪三郎先生ですか!?」
・三郎「ん?、ああ、いかにも。機動工房で初めて人型の機動歩兵理論を実現させたのはこの俺、大阪だ。よく知ってるじゃないか、ボウズ」
・丈二「お......お会いしたかった!!アナタには、一メカニックとして、ぜひ一度!」
・勇里「な、なんだぁ?」
・三郎「おいおい。随分大げさだな。俺はただ、歩く20メートル級の機械の基本設計をしただけの男だぞ」
・丈二「そんなことはありません!武装や装甲の関係上軽量化が難しい機動兵器において、二足歩行という高度で繊細な動作は向いていない。誰も挑戦しなかったことをあなたは成し遂げていらっしゃった!僕にとって、あなたは目標なんです!」
・三郎「照れるじゃねえか。でもなボウズ。俺も結局、そこのあんちゃんと一緒なんだよ」
・勇里「お、俺?」
・丈二「え?」
・三郎「所詮男なんてのはな。子供の頃に描いた夢をいつまでも捨てられない、馬鹿な生き物なんだ。俺が巨大ロボットを歩かせたいと思ったのは、結局はかっこいい人型の巨大ロボットが見たかった、ただそれだけのことよ」
・丈二「大阪先生......」
・三郎「だが俺が作った人型のロボットは、今や地球防衛軍や反抗組織の過激派が持つ殺戮兵器。浪漫も夢も失っちまった哀れな機械達だ。俺が作りたかったのは、そんな冷たいもんじゃない。だから俺はここに来たんだ」
・丈二「......」
・三郎「そこのあんちゃんのココにあるモンは、(心臓のあたりを拳でバンと叩く)そんじょそこらの奴とは比べ物にならねえ熱さだよ」
・丈二「せ、先生」
・三郎「立ちなボウズ。設計主任の、葛西丈二さん」
・丈二「丈二で結構です!大阪先生!」
・三郎「おやっさんでいいよ。どこの現場でもそう呼ばれちまうからな」
・丈二「はい!おやっさん!」
・勇里「な?この人がいれば最強だろ!?」
・丈二「勇里......お前ってやつは!」
・勇里「おいおいおい寄よせって!だきつくなぁ!」
・三郎「はっはっはっはいいねえ、若いってなぁ」
・勇里「それより大阪さん、もう今日から早速入ってもらえます?現場」
・三郎「ああいいとも。そのために来てるんだ。表のトラックに道具も詰めてきてるからな。悪いが勝手に乗り上げさせてもらったぜ」
・丈二「お、おやっさん!是非使っていらっしゃる道具を拝見させて下さい!」
・三郎「おお。何でも見せてやるぞ」
・真希「......ど、どうしよう。途中から一切口が挟めないくらいに温度差を感じたわ......男ってホントにアホなのね......」
第三話完
0コメント